2010年04月13日

細胞:強い光による損傷を防ぐ

藻類と植物は光合成のために光を必要としますが、過剰な光は有害となることがあり、酸化的損傷を引き起こして細胞死に至る場合さえあります。

そこで光合成では、光化学系Uのクロロフィル分子のフィードバック調整された脱励起を介して集光過程をすばやく調節し、安全弁としています。

真核藻類でのこの防御系の仕組みは、ほとんど解明されていません。

LHCSR は、集光性タンパク質複合体スーパーファミリーに属する古いタンパク質で、維管束植物にはみられません。

LHCSR をコードする 3 種類の遺伝子のうち 2 種類をもたない単細胞藻類コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)変異体を用いた研究で、このタンパク質が光強度の変動が大きい条件下での生存に必要とされることが明らかになりました。

このことから、植物と藻類は、光合成機構を損傷から守るのに、それぞれ異なったタンパク質を用いていることがわかります。


### database ###
nature 462,381-534 26 November 2009 Issue no.7272
Letter p.518 / An ancient light-harvesting protein is critical for the regulation of algal photosynthesis / G Peers et al. (University of California, Berkeley)


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2010年04月06日

生理:膜の中の膜タンパク質

多くの膜タンパク質で X 線結晶構造が決定されていますが、本来の細胞膜環境中にあるタンパク質についての直接的な構造情報は極めて少ないものとなっています。

今回、中性子回折、固体核磁気共鳴分光法と分子動態シミュレーションを組み合わせた研究により、膜タンパク質が膜電位の変化を感知して応答するのに使われる S1-S4 電位感知ドメインを含む脂質二重膜の構造と、水和の詳細な様相が明らかになりました。

この極性をもつ電位センサーは膜を貫通するように配向し、周囲の非極性の脂質二重層に中程度の変形を引き起こしているのが観察されました。 

この変形は、水分子が細胞膜と相互作用して電荷をもつ残基を水和し、膜貫通電場を形成するのに十分な大きさであり、その一方で、エネルギーと構造の乱れを最小限に保っています。


### database ###
nature 462,381-534 26 November 2009 Issue no.7272
Article p.473 / Structure and hydration of membranes embedded with voltage-sensing domains / D Krepkiy et al.
news and views p.420 / Structural Biology : Highly charged meetings / Anthony G. Lee


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2010年03月04日

免疫:自己免疫における T 細胞の挙動

中枢神経系の組織は、細胞だけでなく、血中に循環しているほとんどの高分子が透過できない特殊化した血管によって、循環血液から効果的に遮断されています。

この一見完璧な隔絶にもかかわらず、中枢神経系組織は免疫系に監視され、自己免疫性の攻撃を受けることがあります。

今回、Lewis ラット実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルで生体内二光子画像化法を使い、T 細胞が最初に脳に到達してから自己免疫疾患が発症するまでの、エフェクター T 細胞と脳の構造との相互作用過程をリアルタイムで示されました。


### database ###
nature 462,1-126 5 November 2009 Issue no.7269
Letter p.94 / Effector T cell interactions with meningeal vascular structures in nascent autoimmune CNS lesions / I Bartholomaus et al. (Max Planck institute for Neurobiology)
news and views p.41 / Immunology : In the beginning / Richard M.Ransohoff


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2010年02月19日

免疫:監視役としての HMGB タンパク質

染色体の HMGB (high-mobility group box) タンパク質である HMGB1 、HMGB2 、および HMGB3 が、核酸受容体を介する自然免疫応答の活性化全般に不可欠であることが、今回明らかになりました。

HMGB は、Toll 様受容体のリガンドと思われるものであれ、細胞質内受容体のリガンドと思われるものであれ、調べたすべての免疫原性核酸に結合したことから、細胞内核酸全般に対する万能の監視役としての生理的役割をもつ可能性があると考えられます。


### database ###
nature 462,1-126 5 November 2009 Issue no.7269
Letter p.99 / HMGB proteins function as universal sentinels for nucleic-acid-mediated innate immune responses / H Yanai et al (University of Tokyo)


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2009年12月08日

遺伝:X 染色体が種分化に果たす役割

日本に生息するトゲウオ科魚類のイトヨの固体群で、新たに生じた性染色体系が見つかりました。

同じ場所に生息するもう1つの近縁種にはこれがありません。

この発見は、性染色体の変化が生殖隔離および種分化の原因として、これまで考えられていたよりも大きな役割を持っている可能性があることを裏付ける証拠となります。

新たに進化した X 染色体は雄の求愛行動に関する遺伝子を含んでおり、一方、祖先型の X 染色体は行動隔離の遺伝子と雄の種不妊の遺伝子の両方を含んでいることが、遺伝学的マッピングで示されました。

これらの形質は、この種と太平洋でみられる祖先種との間の効果的な生殖的障壁の一部となっています。


### database ###
nature 461,1019-1162 22 October 2009 Issue no.7267
Article p.1079 / a role for neo-sex chromosome in stickleback speciarion / J Kitano et al. (Fred Hutchinson Cancer Research Center)
Making the paper p.1026


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2009年12月04日

性決定:鳥類の性を決める Z 遺伝子

鳥類で性を決めている遺伝子は、何十年にもわたる探索でも見つかっていませんでした。

今回、この実に重要な遺伝子座が、 Z 染色体上にあって、すべての動物で性決定に関わっているらしいことが知られている遺伝子であることが明らかになりました。


### database ###
nature 461,135-304 10 September 2009 Issue no.7261
news and views p.177 / SexDetermination : Birds do it with a gene / Jennifer A Marshall Graves
Letter p.267 / The avian Z-linked gene DMRT1 is required for male sex determination in the chiken / C A Smith et al. (The University of Melbourne)


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2009年12月02日

地球:酸素増減の歴史

地球大気の酸素化は 2 つの大きな段階を経て起きたと考えられていますが、この過程の詳細はまだよくわかっていません。

Frei たちは、縞状鉄鉱層(大量の酸素を鉄酸化物として含んでいる堆積岩)から得られたクロム( Cr )の安定同位体を用いて、先カンブリア時代の海洋における Cr (VI) の存在を追跡し、地球の気圏―水圏系における酸素化の時間分解された描像を得ています。

彼らのデータは、 24 億 5 千万〜 22 億年前の最初の大規模な酸素の増加(大酸化事変)に先立って、大気と海洋表層の酸素化が一次的に高まったことを示唆しています。

そして、18 億 8 千万年の年代をもつ古い縞状鉄鉱層には Cr 同位体の分化がみられず、これは大気酸素濃度が低下したことを示しています。

したがって、大酸化事変以降、大気中の酸素は段階的増加の一途をたどったというわけではないようです。

### database ###
nature 461,135-304 10 September 2009 Issue no.7261
The rise and fall of oxygen
news and views p.179 / Early Earth : Oxygen for heavy-metal fans / Timothy W Lyoms & Christopher T Reinhard
Letter p.250 / Fluctuations in Precambrian atmospheric oxygenation recorded by chrominum isotopes / R Frei et al. (University of Copenhagen)

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2009年11月30日

細胞: mRNA の分解は翻訳中に始まる

メッセンジャー RNA は、仕事を終えてその遺伝情報がリボソームによってポリペプチドへと翻訳されると、自身は分解への過程をたどります。

この過程について広く受け入れられているモデルでは「使用済み」 mRNA は細胞質中の RNA プロセシング酵素が高濃度に存在する「 P 体」で分解されると考えられています。

しかし、新たな研究で、この考え方が正しくないことが示唆されました。

分解は、 mRNA が活発に翻訳中のリボソームとまだ会合している間に始まり、 mRNA がリボソームから隔離された状態にならなければ、分解が開始されないということではないらしいです。

このように、翻訳と分解が同時進行することで効率的に分解が行え、一方、最後の翻訳を行っているリボソームも合成を完了できるのであるといいます。


### database ###
nature 461,135-304 10 September 2009 Issue no.7261
Article p.225 / Co-translational mRNA decay in Saccharomyces cerevisiae / W Hu et al.(Case Western Reserve University)

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2009年11月25日

細胞:テロメア以外にもかかわる TERT

RNA を介した遺伝子サイレンシングの中には、一本鎖 RNA の二本鎖 (ds) RNA への変換によって生じる二次元的な siRNA (低分子干渉 RNA )を必要とするものがあります。

この変換は、 RNA 依存性 RNA ポリメラーゼ (RdRP) によって行われます。

Maeda et al. はテロメラーゼ (RMRP) から dsRNAを生成できることを明らかにしました。

これは、哺乳類の RdRP 活性のはじめての報告です。

TERT が、テロメアを伸長する作用とはまったく無関係に細胞生理に寄与していることを示す証拠が増えてきていますが、今回の研究はその機序の1つを明らかにしています。

### see dada / data bace ###
nature 461,135-304 10 September 2009 Isse no 7261
Article p.230 / An RNA-dependent RNA polymerase formed by TERT and the RMRP RNA / Maeda et al. 

posted by 藤次郎 at 18:47| Comment(2) | TrackBack(0) | scientific situation | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月12日

細胞:遺伝的リスクを最小に

ヒトゲノムには、ゲノム再編成やゲノム不安定性の原因になりやすい、さまざまな種類の「危険性が高い」反復配列が含まれており、それらの一部はがんなどの病気を引き起こすこともあります。

細胞はさまざまなタンパク質を用いて、このようなゲノム不安定性がめったに生じないようにしています。

出芽酵母( Saccharomyces cerevisiae )の第 V 染色体左腕の研究で、ゲノム再編成を防ぐ多数の遺伝子が突き止められました。

意外にも、単一コピー配列が介在するゲノム再編成と「危険性が高い」反復配列が介在する再構成とでは、抑制するための経路が別々に用意されているといいます。


### see dada / data bace ###
nature 460,925-1050 20 August 2009 Isse no 7258
Article p.984

posted by 藤次郎 at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | discovery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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