2010年09月14日

細胞:老化が腫瘍を阻止する

最近の研究で、細胞老化、つまり細胞周期の負荷逆的な停止が、 in vitro での腫瘍増殖を停止させることが示唆されています。

今回 H-K Lin たちは、老化を引き起こす、これまで知られていなかった経路で、既知の老化メディエーターのほとんどが関与していないものを明らかにしました。

シグナルは、転写因子 Atf6 、およびサイクリン依存性キナーゼ阻害因子である p27 と p21 を介して伝えられます。

この経路は、発がん性シグナル伝達が起こっている場合に、がん原遺伝子 Skp2 の不活性化によって明らかになります。

薬理学的に Skp2 複合体を標的とすると、細胞老化が誘導されて腫瘍形成が制御されるので、そのような薬剤は抗がん剤として有効かもしれません。


### database ###
nature 464,317-456 18 March 2010 Issue no.7287
Article p.374 / Skp2 targeting suppresses tumorigenesis by Arf-p53-independent cellular senescence / H-K Lin et al. (テキサス大学 MD アンダーソンがんセンターおよびスローン・ケタリング記念がんセンター)
News and Views p.363 / Cancer : A lower ber for senescence / Manuel Serrano

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2010年08月12日

医学:細菌をもって細菌を制す

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は健康な人の鼻腔にしばしば存在し、病原性感染がこの無害な初期定着菌群に由来することも多い。

また、常在細菌である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)も鼻腔内に定着します。

今回、一部の表皮ブドウ球菌が分泌するセリンプロテアーゼ Esp が、黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成を阻害し、またその鼻腔内定着を減少させることが示されました。

このことは、多剤耐性菌株による感染も含めた、黄色ブドウ球菌感染の予防や治療に対する新しい方策を示唆しています。


### database ###
nature 465,261-390 20 May 2010 Issue no.7296
Letter p.346 / Staphylococcus epidermidis Esp inhibits Staphylococcus aureus biofilm formation and nasal colonization / T Iwase et al.(東京慈恵医科大学)

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2010年06月12日

医学:地球温暖化とマラリア

熱帯マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に関して最近発表された、科学的根拠に基づく分布地図を、主要なマラリア制圧策が導入される前の 1900 年ごろから後のデータと比較した研究で、気温上昇がマラリア制圧への脅威になるという懸念は誤っていることが示唆されました。

地球全体の気温上昇が明らかであった 100 年間にも、マラリアの分布域と発生頻度は急激に減少していました。

予想される温暖化の影響は、制圧活動の効果より少なくとも 1 桁は規模が小さいことから、マラリア制圧計画の成否は、気候以外の要因によって決まる可能性が高いと考えられています。


### database ###
nature 465,261-390 20 May 2010 Issue no.7296
Letter p.342 / Climate change and the global malaria recession / P W Gething et al. (University of Oxford)
News p.280 / Malaria may not rise as world warms / Heidi Ledford
www.nature.com/podcast


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2010年06月10日

気候:海洋は温暖化している

海洋表層は巨大な熱シンクとして働き、人為起源の温室効果ガスにより生み出された余分なエネルギーの大部分を吸収してきました。

このため、海洋の貯熱量は気候変化の主要な指標となる可能性があります。

しかし、地球規模でのエネルギー収支を見積もり、気候モデルを絞り込むのに役立つようにするには、そのような主要な指標の測定の不確実性を十分に解明する必要があります。

今のところ、海洋の熱吸収量の規模は極めて不明確であり、特に年々変動パターンは見積もりによって異なっています。

注目すべき国際共同研究において Lyman たちは、入手不可能な海洋表層貯熱量偏差の変動曲線を比較し、投下式水温水深計データのバイアス補正が難しいことを含めて、この変動曲線に付随する不確実性の原因を分析しました。

そして、不確実性があるにもかかわらず、1993 〜 2008 年の間に 1 平方メートルあたり 0.64 ワットの温暖化傾向を示す、明瞭かつ確固とした証拠が見出されました。


### database ###
nature 465,261-390 20 May 2010 Issue no.7296
Letter p.334 / Robust warming of the global upper ocean / J M Lyman et al. (University of Hawaii at Manoa, NOAA/Pacific Marine Environmental Laboratory)
News and Vews p.304 / Global Change : The ocean is warming, isn't it ? / Kevin E. Trenberth


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2010年06月04日

気候:モンスーンに対する太陽の影響

太陽放射、すなわち日射の変化のような気候への外部からの影響は、地域によって異なる応答を引き起こします。

高緯度域から低緯度域にわたっては豊富な記録が存在し、日射と気候変動の関係を見ることができます。

しかし、熱帯域の記録はずっと少なく、モンスーン特有の雨季と乾季が交互に起こる気候を生む熱帯収束帯が通過する地域の記録は、なおのこと少ないものとなっています。

Verschuren たちは、キリマンジャロ山の斜面に存在する火口湖、チャラ湖の 2 万 5,000 年にわたる堆積層序にそのような記録を発見し、水文変動の代理指標を分析しました。

そして、東アフリカのモンスーンに伴う降水は、約 1 万 1,500 年周期で変動していることが明らかになり、この周期は、軌道運動によって制御される太陽放射強制と同期していたことがわかりました。


### database ###
nature 462,535-688 3 December 2009 Issue no.7273
Letter p.637 / Half-precessional dynamics of monsoon rainfall near the East African Equator / D Verschuren et al. (Ghent University)
Abstractions p.543 / Drik Verschuren

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2010年04月06日

生理:膜の中の膜タンパク質

多くの膜タンパク質で X 線結晶構造が決定されていますが、本来の細胞膜環境中にあるタンパク質についての直接的な構造情報は極めて少ないものとなっています。

今回、中性子回折、固体核磁気共鳴分光法と分子動態シミュレーションを組み合わせた研究により、膜タンパク質が膜電位の変化を感知して応答するのに使われる S1-S4 電位感知ドメインを含む脂質二重膜の構造と、水和の詳細な様相が明らかになりました。

この極性をもつ電位センサーは膜を貫通するように配向し、周囲の非極性の脂質二重層に中程度の変形を引き起こしているのが観察されました。 

この変形は、水分子が細胞膜と相互作用して電荷をもつ残基を水和し、膜貫通電場を形成するのに十分な大きさであり、その一方で、エネルギーと構造の乱れを最小限に保っています。


### database ###
nature 462,381-534 26 November 2009 Issue no.7272
Article p.473 / Structure and hydration of membranes embedded with voltage-sensing domains / D Krepkiy et al.
news and views p.420 / Structural Biology : Highly charged meetings / Anthony G. Lee


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2009年12月02日

地球:酸素増減の歴史

地球大気の酸素化は 2 つの大きな段階を経て起きたと考えられていますが、この過程の詳細はまだよくわかっていません。

Frei たちは、縞状鉄鉱層(大量の酸素を鉄酸化物として含んでいる堆積岩)から得られたクロム( Cr )の安定同位体を用いて、先カンブリア時代の海洋における Cr (VI) の存在を追跡し、地球の気圏―水圏系における酸素化の時間分解された描像を得ています。

彼らのデータは、 24 億 5 千万〜 22 億年前の最初の大規模な酸素の増加(大酸化事変)に先立って、大気と海洋表層の酸素化が一次的に高まったことを示唆しています。

そして、18 億 8 千万年の年代をもつ古い縞状鉄鉱層には Cr 同位体の分化がみられず、これは大気酸素濃度が低下したことを示しています。

したがって、大酸化事変以降、大気中の酸素は段階的増加の一途をたどったというわけではないようです。

### database ###
nature 461,135-304 10 September 2009 Issue no.7261
The rise and fall of oxygen
news and views p.179 / Early Earth : Oxygen for heavy-metal fans / Timothy W Lyoms & Christopher T Reinhard
Letter p.250 / Fluctuations in Precambrian atmospheric oxygenation recorded by chrominum isotopes / R Frei et al. (University of Copenhagen)

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2009年11月04日

遺伝:miRNA と mRNA の相互作用

遺伝子発現の調節に、阻害性マイクロ RNA (miRNA) による遺伝子サイレンシングが重要なのは、現在では広く認められています。

しかし、miRNA によるメッセンジャー RNA の調節に必要なのは、両方の配列のごく短い部分(8 ヌクレオチド以下)が相補的であることだけなので、予想される多くの mRNA 結合部位の中のどれが in vivo でそれぞれの miRNA の標的となるのかを確定することは、ほぼ不可能だとわかっています。

今回、広範に存在するエンドヌクレアーゼで、 RNA 誘導性サイレンシング複合体の一部である Argonaute タンパク質と、 miRNA および mRNA との相互作用に注目する巧妙な HITSCLIP 法により、 mRNA 転写産物の miRNA 結合部位の正確なマップが解読されました。

この方法は、一般的応用が可能なので、 miRNA の生物学的役割の解明のための新しい手法となりそうだといいます。

また、このマップを用いて、臨床にかかわる mRNA に対する RNA 干渉(RNAi)療法の標的部位を決定できるといいます。


### see dada / data bace ###
nature 460,429-544 23 July 2009 Isse no 7254
Article p.479
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2009年10月24日

発生:活性酵素の有用な働き

活性酵素種(ROS)については、主に DNA 損傷、タンパク質や脂質の酸化やアポトーシスでの有害な影響が調べられてきましたが、組織によっては ROS にも有益な効果があることが次第に認められつつあります。

(nature 461,439-558 no.7263)
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2008年06月17日

北極の気候:高所の温暖化

 近年の北極行きの温暖化の鉛直構造が報告された。

 ここ数十年にわたって、全球平均のほぼ 2 倍という大きさで、この現象は「北極増幅(Arctic amplification)」として知られている。しかし、この気温増幅を引き起こす原因はよくわかっていない。

 今回の報告によれば、最近数十年間で引き起こった雪氷面積の減少が、その一因である可能性があるという。

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2007年10月20日

宇宙:超新星爆発の予行演習

 2004年10月、銀河 UGC 4904 に明るい可視光トランジェント(一時的に出現する天体)が発見されたが、このトランジェントは超新星かと思われるほど大規模で明るかったという。

 その後の研究で、そこまでの規模ではなかったことが示唆されたものの、発見から2年後に、派手な爆発を起こしたようである。

 超新星 SN 2006jc の天球上の位置は、2004年の可視光トランジェントのそれとぴったり同じだったという。このような二度の増光が観測されたのは今回が始めてである。

 現在のところその原因はわかっていない。

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2007年10月18日

気候:メタンによる温暖化の根拠

 暁新世/始新世境界温暖極大期(PETM)と呼ばれる、およそ5,500万年前に起こったと考えられている全球的温暖化の期間は、温室効果ガス濃度の急激な上昇が原因とされ、その説明として最も可能性が高いのが「メタンハイドレートの解離」という現象である。

 これまで、高緯度域で起こった陸上環境からのメタン放出により、温暖化への影響が増強されたのではないかと考えられていたが、湿地からのメタン放出の増大を示す直接的な根拠はなかった。

 英国南東部のコバム褐炭層(Cobham Lignite)は、近年その性質が明らかにされた「PETM期を通して形成された一連の堆積物」にあたるが、今回、その地球化学的分析からある程度の証拠が得られたという。

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2007年10月17日

気候:二酸化炭素と温度の関連

 大気中の二酸化炭素と温度の関連性について、密接に結びついているという説は、これまではまだ不一致な点はあれども、最も有力な説として、教育機関などの基礎科学の講義で説かれてきた。
 これは、一般常識として根付いている知識と思われる。

 一般的には、「関連性が強くなるほど、対策を行うには、自体は深刻になる」ぐらいの物だろう。

 しかし、地球温暖化に対して懐疑的な人々がいるのも事実で、今日まで激しい議論が交わされてきた。都合が悪いから否定したいのか、ただの嫌気で否定しているのか、どちらかといえば、否定できるものがあれば何でもいいような、懐疑的な態度である。

 一部の、地球温暖化に対して懐疑的な人々は、地質学的年代の遠い過去において、高い大気中CO2濃度が常に地球温暖化と関連していたかどうかについて地質学者の意見が一致しないことにすばやく飛びつき、あげつらっていたという。

 しかし、新しい研究法によって、大気中のCO2濃度と地球の表面温度はいつも密接に結びついてきたという一般的な見方に更なる裏づけが加わったらしい。

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2006年06月15日

進化:「生きた化石」が示す

 ダーウィンの「いまいましい」謎が再考された。

 被子植物はほとんどの場所でみられるが、その起源はわかっておらず、チャールズ・ダーウィンはこの問題を「いまいましい謎」と呼んだ。

 だが、今回、「生きた化石」というべき被子植物種を調べることにより、最初の被子植物は激しい「進化実験」の時代に出現した可能性があることが明らかにされた。

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2006年06月14日

宇宙:再電離が抑えた矮小銀河形成

 宇宙ではじめて星と銀河ができたとき、これらの放射する光が中性気体から電子を剥ぎ取って、電荷イオンが発生した。

 この過程は、「再電離」として知られている。

 観測結果から、この過程は現在の理論が示すとおり、矮小銀河の形成を形成するように作用したことが示された。

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2006年06月08日

ワクチン:免疫を潜り抜ける

 ウイルスベクターを用いたワクチン送達がなかなか実現しないのは、これらのベクターの働きが既存の免疫系に邪魔されるからである。

 構造をベースとした巧みな設計により、こうした問題を回避する道が開かれた。

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2006年06月07日

太陽系:惑星間での拉致事件

 どうやら、海王星の衛星トリトンは、とのり残されたために捕獲されたものであるらしい。

 海王星が通り掛かりの連星系から衛星を得た仕組みがわかった。

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2006年05月31日

植物:糖が助ける花の枝分かれ

 植物を題材とした生物学の研究結果であるが、これは、生物界にみられる基本構造であるため、生物学だけにとどまらず、生物物理学および生命工学や複雑系生命学などの研究者にとってはとくに、有用な報告になるかもしれない。

 D Jackson らは、nature 誌 2006 年 5 月 11 日号で、トウモロコシの花軸の分枝がありふれた糖によって制御されている可能性について述べ、単純な代謝物が生物の成長、発達を左右することを明らかにしている。

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2006年05月29日

古生態:大型獣絶滅の原因

 先史時代に起こった最大級のミステリーの 1 つは、今から 1 万年あまり前の、大型獣絶滅の急増という事件である。

 大型獣絶滅の原因については、いくつものモデルがあるのだが、新たな証拠によって、今回、その「真犯人」がみえてきた、かもしれない。

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2006年05月25日

進化:硬骨魚類の頭蓋の秘密を握る化石魚類

 新たに発見された 4 億年以上前の化石魚類は、現在の地球で繁栄をとげた脊椎動物の 2 大系統の根源をつなぐ存在となるかもしれない。

 中国の雲南省で出土したこの化石類は、現生魚類の大部分を占める条鰭類硬骨魚と、現在の陸生脊椎動物の祖先を生み出した肉鰭類硬骨魚の両方の特徴を合わせもっている。
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