2007年10月24日

物理:反強磁性を自在に制御する

 強磁性体はどこにでもあるが、強磁性という性質自体は稀なものである。その近縁にあたり、もっと不思議なものが反強磁性体で、これにはさらに多く見られるが、この性質が知られたのは100年足らず前で、技術関連で問題とされ始めたのは20年ほど前のことに過ぎない。

 その理由の1つは、強磁性磁区の類似物、つまり強磁性体を分割してできる小さな棒磁石に相当するものが得られないということである。

 今回、X 線光子相関分光法という新しい技術を用いて、クロムの反強磁性体におけるスピン密度と電荷密度の超構造をナノメートルスケールで調べることが可能となり、実験が行われた。

 この結果から、反強磁性体の幅広い応用への道を開くエンジニアリング技術が生まれるかもしれない。

 今回使われた新技術により、実際には反強磁性磁壁が静止することなく、数マイクロメートルの範囲にわたって常に前進したり後退したりしていることが示された。

 そして、磁壁の動きは、100 K 以上の温度で出つ的に活性化するものの、より低温では活性化されず、40 K 以下に冷却すると、量子ゆらぎと一致する一定値に飽和する、という。

参考文献:
nature Vol 447 | Issue no.7140 | 1-114 | 3 May 2007 |
This Issue p.xix / Antiferromagnetism tamed ?
Letter p.68 / Direct measurement of antiferromagnetic domain fluctuations / アルゴンヌ国立研究所(米) O G Shpyrko et al.


 強磁性体から磁区運動が原因となって発生する磁気ノイズの測定は、ほぼ100年前に始めて行われ、科学技術を大きく支えてきた。

 反強磁性体は、正味の外部磁気双極子モーメントを持たないが、それでも電子スピンの周期配列が巨視的な距離にわたって広がっており、磁気ノイズをみせるはずである。しかしこれは、強磁性体の特徴である巨視的スケールではなく、原子間距離の数倍のオーダーの空間波長でサンプリングする必要がある、という。

 本論文では、クロム元素の反強磁性に伴うスピン密度波と電荷密度波のナノメートルスケールの超構造の揺らぎを直接測定した結果を報告している。

 今回用いた X 線光子相関分光法では、コヒーレントな X 線解析がスペックルパターンを生じ、このパターンが特定の磁区配置の「指紋」となる。

 このパターンの時間発展は、磁壁が数マイクロメートルの範囲にわたって前進・後退することに相当する。

 本研究では、反強磁性磁壁エンジニアリングで有用な測定手段を実証しただけではなく、最も簡単な反強磁性体のスピンダイナミクスに関する基礎的な知見も明らかにしている。

 すなわち、磁壁運動は、100 K 以上の温度では熱活性化されるものの、これより低温では熱活性化されず、40 K 以下に冷却すると量子揺らぎと合う有限な値で飽和する速度を持つようになる、という。

posted by 藤次郎 at 07:00| Comment(0) | TrackBack(1) | discovery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 強磁性強磁性 (Ferromagnetism) とは、隣り合うスピンが同一の方向を向いて整列し、全体として大きな磁気モーメントを持つ物質の磁性を指す。そのため、物質は外部磁場が無くても自発磁化を持つこ..
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