2007年10月23日

脳:無意識下でのネットワークづくり

 脳が休んでいる間、神経ネットワークを何をしているだろうか。

 実は、脳が休んでいる間はアイドリング状態になっており、神経回路では自発的な変動を起こしている。

 ヒトの脳では既に研究によってわかっているものであるが、サルの脳にも同じような動向が見られるという。

 霊長類では、これらのネットワークの一部は深い麻酔をかけた上体でも、高度に組織だった活動パターンを示すことがわかった。


 脳の機能研究は、特定課題の遂行中や特定刺激への応答時の活動の測定に傾きがちである。しかし、実際には脳は時間とエネルギーの大部分をこうした活動に費やしているわけではない。

 今回、機能的磁気共鳴画像分析から、サルの脳は、感覚や運動、認知といった現象とこれまで関係付けられてきた型の複雑な分布パターンを取って絶えず周期的に変動していることが明らかになった。

 この変動は、麻酔で意識が消失した状態でも存在し、解剖学的な連結構造の基本パターンに対応している。これらの神経回路が知覚や思考を可能にしている基本構造なのかもしれない。

(実のところは、機械分野で人体の構造を仮想上で模範して、コンピューターのプログラム上で応用されており、身近なところの一例としてはPCのオフィスソフトやソフト、Webコンテンツなどでは既に応用されている技術である。)

 面白いことに、この変動の枠組みは、サルとヒトと全く同じではないにしろ似通っている(つまり、私的な解釈で言えば、それはヒト固有に形成されたものではなく、脳をシステムを形成する1つの原理的な構造であると見られることから)、この構造は霊長類の種を通じて保存されているとみられる。

参考文献:
nature Vol 447 | Issue no.7140 | 1-114 | 3 May 2007 |
This Issue p.xvii / The Idling Brain
News and Views p.46 / NeuroScience : Unconscious networking / Mark A Pinsk & Sabine Kastner
Letter p.83 / Intrinsic functional architecture in the anaesthetized monkey brain / ワシントン大学(米、セントルイス) ハーバード大学 および マサチューセッツ総合病院(米) J L Vincent et al.


 脳機能を研究するための伝統的な手法では、感覚や運動、認知について制御された範例に対する生理的な応答を測定する。

 しかし、脳のエネルギー消費の大部分は、特定の刺激や行動とは明確に関連付けられていない継続的な代謝活動に費やされている。

 この継続的活動を解明するために行われたヒト脳の機能的磁気共鳴画像研究からは、血中酸素濃度レベルに依存した磁気共鳴シグナルの自発的な変動が、安静状態でも継続的に生じていることがわかっている。

 ヒトではこの変動が、広範囲にわたる皮質系(実験課題で引き起こされる反応の機能的構造にかかわっている)で時間的に整合している。

 今回、Vincent らは、これと同じ現象が、深い意識消失を起こすことがわかっているレベルの麻酔を施したサルにも見られることを示している。

 この整合した自発的変動は、よく知られた3つの系(眼球運動系、体性運動系、および、視覚系)や「初期設定(default)」の系(ヒトのみに備わった能力を支えていると一部の研究者が考えている一群の脳領域)内ではっきりと見られた。

 これらの結果から、系の整合した変動はおそらく、脳の機能的組織化のうち進化的に保存されているものであり、意識のレベルを超えて働く側面を表していると考えられる、とVincent らは言う。



 現在、脳についての関心が一般的に高く、脳トレーニングに関する著書や商品がトレンドのようであるが、実際の生物における脳のシステムがどんなものか解明されるのは、まだまだ先の話になりそうである。

 今回の報告された論文は画期的な試みから研究されたものの1つであるが、画期的な試みによる研究は他にもあっても、実のところを言えば、脳科学や神経科学において分子レベルの研究へ移行した研究者が多く出てきた反面、専門分野では従来の神経学や脳科学の知識の固定観念をそのまま持ち続けたまま研究が進められている研究者の方がまだ量が多いようである。

 いくらテクノロジーの向上によって分子レベルでの研究が可能となった2000年以降から急速に研究が進んでいるとはいっても、専門課程の脳科学である場合、従来の神経学や脳科学の知識の固定観念(例えば他の種の生物にはなくてヒト特有の能力と考えられているというあたり)がまだ残っているためか、研究速度が遅いようである。

posted by 藤次郎 at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | discovery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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