2007年10月22日

生態:水不足の熱帯

 熱帯雨林は地球上で最も多様性に富む種類の植物群集であり、その生態系が持つ様々な機能を(そこに集まる生物種だけでなく)人間にも提供している。

 そのため熱帯林には政策立案者から環境保護団体まで、多方面からの注目が集まっている。

 今回、熱帯林に関して一般的な「湿潤な熱帯林には全般に水分がたっぷりある」という前提に疑問が投げかけられた。

 パナマ地峡全域の種分布パターンの評価により、こうした熱帯林の植物群集の構造が作られる上で旱魃が大きな役割を担っていることが示されたのである。

 したがって、気候変動や生息域の細分化によって、土壌成分の利用可能量が変化すると、熱帯の種は大打撃を被ると考えられる。

参考文献:
nature Vol 447 | Issue no.7140 | 1-114 | 3 May 2007 |
This Issue p.xix / Water-limited tropics
Letter p.80 / Drought sensitivity shapes species distribution patterns in tropical forests
Pollinator shifts drive increasingly long nector spurs in / スミソニアン熱帯研究所(パナマ) および カイゼルスラウテルン大学(独) B M J Engelbrecht et al.


 熱帯林の環境匂配に沿った高木種分布パターンに関しては詳細に報告されているが、こうしたパターンを生み出す機構をほとんど知られていない。

 これまで、提唱された機構を評価する取り組みは、環境変動の関連軸に対する種の反応に関して比較データが存在しないことに妨げられて来た。

 本研究では、区域規模でも、局所規模でも、干ばつ感受性の差異が熱帯林の植物分布を作り上げることを明らかにする。

 今回の分析は、48種の高木および低木の干ばつ感受性に関する実験的野外評価、およびパナマ地峡全域の降水量匂配を網羅する定点122ヶ所からなるネットワーク内の局所規模と区域規模の高木分布に基づいて行った。

 その結果、土壌水分の利用可能量に関するニッチ分化が熱帯高木の局所分布と区域規模分布の両方の直接的な決定要因となっていることが示唆された。

 このことから、全球規模の気候変動及び森林の細分化による土壌水分の利用可能量の変化は、熱帯の種分布、群集の構成、および、多様性を変化させるものと考えられる。



 余談――。一般的に、植物種については、動物と違い生物としての認識に入っていない、むしろ道具として扱うことが多い。

 すなわち、植物種とも共存しうるような適応能力を人類が発揮させなければ、結果、植物種との生存競争で干ばつに至るという話である。

 人類は農業の上で環境の影響は考えても、植物種自身のことは考えない。たとえ、保護団体でも、他の生物の保護や生態系を守るための道具として考えていることがほとんどではないだろうか。

 植物だって同じ地球環境で生まれた生物なのだから、生きるために(最低限度)一定の水(と太陽の光)が必要なわけで、人間が(たとえ保護活動で行ったことであっても)それを必要以上に奪えば、生存競争で干ばつになるという話である。

 少なくとも一般的な気候学者や地球工学にはない(生態系を含んだ)環境サイクルの知見かと思われる(参照)。

 植物種といえば、地球温暖化対策の対応の道具としか考えられていないのが一般的であるが、「植物種は人類とも生存競争の対象になっている」という生物学的な基礎科学の知見でを認識すると共に、「植物種とも共存を図らなければならない」という知見を養うには、よい題材になるかと私は考える。

 勿論、生命倫理という話ではなく、物事の成り立ちの話上、環境保全を考えるなら、ロジック上で、性質や物事の構造や成り立ちのそれを考えなきゃ、駄目よ、という話である。

posted by 藤次郎 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | discovery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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