2007年10月19日

工学:どんどん進化するNMR

 NMRという優れた測定法をさらに改良。

 まるでソレイドの魔法のような MAS (マジック角回転: magic angle spinning )と呼ばれる手法を使うと、核磁気共鳴分光法で固体の扱う際の感度を、溶液を使う場合と同じくらいにすることができるという。これによって、シグナル検出のさらによい方法が考えられた。

 核磁気共鳴(NMR)は、液体や固体の局所構造と動的性質を探ることが出来るため、現在利用できる最も強力で汎用性の高い分析法の1つとなっている。

 しかし、NMRには本質的に感度が非常に低いという大きな欠点があり、このため極めて小さい試料には向かない。

 そこで登場したのが、「MACS」すなわちマジック角コイル回転という新技術である。

 これは、誘導結合を用いてプローブパルスの無線送信とNMRシグナルの無線受信を実現する。つまり、これにより、NMR検出コイルと試料を一緒に非情に高回転で回転させることが可能となり、NMR測定が高感度で行えるようになった。

 この方法により、有機粉末や生体組織の小さい試料からのシグナルは、ほぼ1桁増倍されるので、特に高スループットの化学分析や生物医学分析に役立つと期待される。

参考文献:
nature Vol 449 | Issue no.7145 | 255-382 | 7 June 2007 |
This Issue p.xxi / NMR up to speed
News and Views p.646 / Spectroscopy : The Magic of solenoids / Arthur S Edison & Joanna R Long
Letter p.694 / High-resolution, high-sensitivity NMR of nanolitre anisotropic samples by coil sponning / CER サクレー研究所(仏) D Sakellariou et al.


 NMRは本質的に、非常に小さい試料(例えば、同位体標識した生体分子や先端材料の高スループットスクリーニングや「ラボオンチップ」研究を行う際に選ばれたりするようなもの)の分析には向かない。

 これまでNMRの感度は、静止マイクロコイル、代替マイクロコイル、代替検出スキーム、前分極などを用いて改善されてきた。しかし、非液体試料から分解能のよいスペクトルを得るのに欠かせない高速試料回転を用いたNMR実験に、これらの戦略を適用することは容易でない。

 今回 Sakellariou らは、誘導結合により、検出コイルと試料の両方を高速回転させた状態での高周波パルスの無線送信とNMR信号の受信が可能になることを示した。

 これにより、最適充填因子、高周波場での非情に大きい振幅、試料堆積の減少につれて増加する増強感度という特徴を持つ NMR が可能になる。

 有機文末や生体組織のナノリットルサイズの試料で得られるシグナルは、標準的なNMR測定に比べてほぼ1桁向上する(これはシグナル取得が2桁速いことと等価である)。

 この手法によって、放射性物質のように多重安全バリア内に閉じ込める必要のなる試料を研究する際にも最高感度が得られるという。

 原理的には、マイクロなのメートルサイズの検出コイルを試料と同時に回転させ、誘導結合を用いること(著者らの手法の際の核心となる技術)で、分解能のよいスペクトルを得るために機械的な高速回転が必要で質量の限られたどのような試料についても高感度NMR測定を行える。

 この手法は、市販のNMR装置で簡単に実行でき、小型化による性能改善を示す。このため、研究者らは、この手法が新規な固体NMR方法論の開発を容易にし、化学および生物試料の高スループット分析に広く利用されることを期待しているという。
posted by 藤次郎 at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | discovery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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