2006年06月08日

ワクチン:免疫を潜り抜ける

 ウイルスベクターを用いたワクチン送達がなかなか実現しないのは、これらのベクターの働きが既存の免疫系に邪魔されるからである。

 構造をベースとした巧みな設計により、こうした問題を回避する道が開かれた。

参考文献:
nature Vol 441 | Issue no.7090 | 127-254 | 11 May 2006 | News and Vews p.161 / Vaccines : Engineering immune evasion / John R Mascola

 宿主の中和抗体から逃れるためにウイルスが表面タンパク質を変異させるのは、ウイルスの免疫回避における一般的な戦略である。

 抗ベクター免疫という重要な問題を解決するための新たない電子伝達ウイルスベクターの開発において、そのような免疫回避法が意図的に応用された例はない。

 複製不能なアデノウイルス血清型 5 ( rAd5 )をベクターとして作製した、ヒト免疫不全ウイルス 1 型やほかの病原体に対する組み換えワクチンは、前臨他研究において強い免疫原性をもつことが証明されたが、ヒト集団内、特に発展途上国においては、Ad5 に対する免疫が既に広く存在していることから、おそらく使用が制限されるであろうと考えうる。

 このたま、それを回避するための試行が行なわれた。

 下記に「ヘキソンタンパク質のキメラアデノウイルス 5 型ベクターは既存の抗ベクター免疫を回避する」ことについて報告された内容を示す。
参考文献:
nature Vol 441 | Issue no.7090 | 127-254 | 11 May 2006 | Letters p.239 / Hexon-chimaeric adenovirus serotype 5 vectors circumvent pre-existing anti-vector immunity / ハーバード大学医学系大学院(米) D M Roberts et al.

 今回筆者らは、rAd5 ベクターを改変することで抗 Ad5 免疫を回避できることを示した。

 筆者らは、Ad5 のヘキソンタンパク質の表面にある 7 つの短い超可変領域( HVR )をまれなアデノウイルス Ad48 型の対応する HVR で置き換えた、新しいキメラ rAd5 ベクターを構築した。

 これらの HVR キメラ rAd5 ベクターは高力価で産生され、また、 in vitro で連続継代させても安定であったという。

 サル免疫不全ウイルスの Gag (群特異的抗原)を発現している HVR キメラ rAD5 ベクターは感染していないマウスやアカゲザルで rAd5 の親ベクターに匹敵するほどの免疫原性があることが証明された。

 既に強い抗 Ad5 免疫が存在する場合、HVR キメラ rAd5 ベクターの免疫原性は検出可能なほどは抑制されなかったが、rAd5 親ベクターの免疫原性は消失したという。

 これらの結果は、機能的に関連した抗 Ad5 特異的中和抗体がヘキソンの HVR 内に存在するエピトープを標的としていることを示している。

 さらに、ウイルスのキャプシドタンパク質表面上に存在する重要なエピトープを除去することにより、既存の抗ベクター免疫を改善できることもわかったという。

 そのようなキメラウイルスベクターはワクチン摂取や遺伝子治療の実用化に重要なかかわりをもつと著者らは考えている。
posted by 藤次郎 at 08:06| Comment(0) | TrackBack(0) | frontiers | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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