2006年05月29日

古生態:大型獣絶滅の原因

 先史時代に起こった最大級のミステリーの 1 つは、今から 1 万年あまり前の、大型獣絶滅の急増という事件である。

 大型獣絶滅の原因については、いくつものモデルがあるのだが、新たな証拠によって、今回、その「真犯人」がみえてきた、かもしれない。

 この大量絶滅の原因の 1 つは、北アメリカに新たに到来した人類がマンモスや野生のウマ( Equus ferus )などを捕り尽くしてしまったことにあると考えられてきた。

 だが、今回、600 を超える獣・人骨の年代が新たに測定され、絶滅の要因は自然の気候変動などほかにあることが示された。

 この大量絶滅をめぐる一連の出来事は、R D Guthrie が新たに調べた放射性炭素測定年代によって今までよりも正確に説明できるという。

 大量絶滅が起こったのは、1 万 3000 〜 1 万年前の更新世から終新よへの移行期である。

 今回の試料には、この移行期を生き延びたバイソンやワピチ(大型のシカ類)、ヘラジカ、ヒトのものと、移行期に絶滅したマンモスと野生のウマのものが含まれる。

 得られた根拠からすると、このときの大型獣絶滅は、気候変動あるいはもっと微妙なメカニズムが原因で起こったもので、これまで考えられていたように新世界に到来した人類の猛烈な狩猟活動によるものではなかったことになる。

 今回の詳細な解析により、キーストーン種(他の種の存在に大きな影響力をもつ種)である草食のマンモスを人類が絶滅させたために植生が変化し、それが連鎖反応的にほかの獣たちを絶滅に追い込んだという「キーストーン種の除去」説も退けられる。

 尚、コスタリカで調べた研究者の報告に関する教養番組がディスカバリーチャンネルにて放送されてもいるが、その報告によれば、過去に水域のであった地層の発掘によって森林の上で生活する哺乳類などのその域では珍しい化石が見つかったことから気候変動が原因であったと考え、その経緯から、病原性の死因の可能性からも研究されたのであるが、その後、そのホモ属の化石周辺で炭化物が発見されたことから、「人類がコスタリカに移動し焼畑を行ったことが、その土地の大型猛獣の絶滅に追い込んだ」としたモデルなどもある。

 しかし、これも、一般的な知識では、1 万 1000 年前にメソポタミアと中国で農業が誕生し、焼畑が必要とされる方法が行なわれたのはヨーロッパで 8000年前と知られているため、果して、1 万 3000 年前にヒトが穀物を栽培するために焼畑などで森林伐採したかどうかの年代的な問題もあり、これまで妥当と思われるようなモデルはなかった。


 更新世から完新世への移行期の特徴として、生態系の劇的な再編、種の分布や絶滅が挙げられるが、この移行期のもので年代が確定している大型哺乳類の化石の数が十分でないことが、さまざまな原因との関連性を解明する上での障害となっている。

 下記に「新たに得られた放射性炭素測定年代による気候変動と人類移住および更新世末の大量絶滅との関連付け」について報告された内容を示す。
参考文献:
nature Vol 441 | Issue no.7089 | 1-126 | 4 May 2006 | Letter p.207 / New carbon dates link climatic change with human colonization and Pleistocene extinctions / アラスカ大学(米) R D Guthrie

 本論文では、アラスカ−リューコン準州( AK - YT )地域から出土した更新世後期の化石について公表済みの放射性炭素測定年代に、新たな年代値を多数追加し、これまで認定されていなかったパターンを幾つか示している。

 例えば、更新世を息の見たステッポバイソン( Bison priscus 、後に進化してアメリカバイソン Bison bison となる)やワピチ( Cervus canadensis 、大型のシカ類)、ヘラジカ( Alces alces )といった動物種は、人類移住より前に個体数を増やし始め(ヘラジカの増え方は他の 2 種ほどはない)、人類移住の最中も個体数を増やしていた。

 そして、これらの動物種の個体数増加は、ウマ( Equus ferus )やマンモス( Mammuthus primigenius )の地域的絶滅に先立って起こった。

 これらのパターンから少なくとも AK - YT 地域では、更新世末の絶滅に関する一部の仮説、即ち、同時期の人類によって集中的に行なわれた大量狩猟や「キーストーン種」の捕獲・駆除、「古代病」などを原因と見る諸仮説を退けることができる。

 人類の影響は弱いとする仮説、および(あるいは)生態上の種の交替・移動に原因があるとする仮説の方が、今回のデータとはよく一致する。

 今回得られた測定年代の新パターンは、餌に恵まれた特異な移行期の年代の最中に(自然な気候変動によって)生態的ふるい分けが急激に進み、それが人類を含む大型哺乳類すべてに影響を及ぼしたことを示している、という。



 やはり、有機物を生物から摂取しなければ生きていけない生物であるだけに、食い物がなくなるというというのことが一番痛いところである。

 したがって、今回の報告は妥当なものだと思われる。


 進化論の謎も、いつの日か妥当な見解が見出せるときがくる日を楽しみに待つことにしよう。
posted by 藤次郎 at 08:22| Comment(0) | TrackBack(0) | frontiers | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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