2006年05月19日

医学:心血管疾患の治療のために

 補体を介する炎症は、先進国の死因として最も多い心臓発作および脳卒中で、虚血性壊死による組織損傷を悪化させる。

 梗塞範囲が大きい場合は、即座に病的状態の悪化や死亡率の上昇につながり、また、急性期を乗り越えた患者では、機能しない梗塞瘢痕が大きくなるほど長期予後が悪くなる。

 つまり、新しい心臓保護および神経保護療法に対する重要な医学的要求がいまだに満たされていないという。

 研究者は以前、損傷を受けた組織で露出しているリガンドに結合し、その後補体を活性化する古典的な急性期タンパク質であるヒト C タンパク質( CRP )が、冠動脈血紮あるいは大動脈血紮を受けたラットで、それぞれ心筋あるいは脳の梗塞の範囲を拡大することを示した。

 ラット CRP はラット補体を活性化しないが、ヒト CRP はラットとヒトの両方の補体を活性化する。

 そのため、ヒト CRP のラットへの投与は、ヒト内因性 CRP の作用を解明するための優れたモデルとなるという。

 下記に今回発表された「心血管疾患の治療のために C 反応性タンパク質を標的にする」ことについて報告された内容を示す。
参考文献:
nature Vol 440 | Issue no.7088 | 1089-1244 | 27 April 2006 | Letter p.1217 / Targeting C - reactive protein for the treatment of cardiovascular disease / ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(英) M B Pepys et al.

 本論文では、CRP の特異的低分子阻害剤として、 1 , 6 - ビス(ホスホコリン)―ヘキサンの設計、合成およびその有効性について報告している。

 このパリンドローム構造をもつ化合物 5 分子は、 2 個の五量体 CRP 分子と結合する。

 つまり、リガンドとの結合に必要な CRP の B 架橋結合によってふさぎ、その機能を阻害するのである。

 急性心筋梗塞を発症させたラットへ 1 , 6 ―ビス(ホスホコリン)―ヘキサンを投与すると、ヒトの CRP の投与によって引き起こされる梗塞範囲の拡大や心機能異常は認められなかったという。

 したがって、CRP の治療的阻害は、急性心筋梗塞における心臓保護の有望な新アプローチであり、また、脳卒中においても神経保護作用をもつ可能性があるという。

 損傷を受けた細胞で露出しているリガンドに CRP が結合することによって、補体を介した組織障害が悪化する可能性があることから、CRP 産生の増加を特徴とする炎症、感染および組織損傷などへの広い応用が考えられるという。


 分子レベルで医学を考えると、これまでの医学の知見とは、随分と大きく変わってくるのがわかる。

 ふむぅ…。
posted by seed at 08:36| Comment(0) | TrackBack(0) | scientific situation | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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