2006年03月14日

ヒトに近いのはナメクジウオよりホヤ

 なにやら、生物学進化史がえらいことになってきているようである。

 進化起源において、ナメクジウオの取り扱いは要注意の認識ゾーンに入ってきたからである。

 新たに得られたゲノムデータの系統学的な分析が行なわれたことで、教科書に載っている脊椎動物の起源についての話がなんだか怪しくなってきた。

 しかし、長い間魚の祖先とみなされてきたナメクジウオは、まだ主役の座を降りたわけではない。
参考文献:
nature Vol 439 | Issue no.7079 | 891-1030 | 23 February 2006 / News and Viws p.965 / Careful with that amphioxus / Henry Gee


 進化史の通説では、我々ヒトを含む脊椎動物は、ホヤなどの被嚢動物よりもナメクジウオなどの頭索動物と類縁関係が近いとされていた。しかし、今回、遺伝学の手法を使って、この異論が投げかけられていた。

 被嚢動物(尾索動物ともいう。尾虫類、サルパ類、ホヤ類を含む)、頭索動物(ナメクジウオ類)、脊椎動物(ヤツメウナギやメクラウナギを含む)は、脊索動物を構成する 3 つの現生分類群である。

 伝統的な見方では、頭索動物が脊索動物の中で最も古い系統だとされている。この見方を正当化する主な理由は、頭索動物と脊椎動物が形態全般で類似していることや、両者が被嚢動物に比べて外見がより複雑であることである。

 3 者の類縁関係は脊椎動物の起源解明に極めて重要であるにもかかわらず、脊索動物の類縁関係を調べる系統発生研究からは確定的な結果は得られていない。

 さらに、近年、リボソーム RNA などの単一遺伝子や複数遺伝子群を基に描き出された系統樹から、従来の伝統的な見方に対し、そうではないと考えられるようになってきた。

 H Philippe らは、遺伝子よりも外見を元にした従来の分類法に疑問を抱いていた(これは、私も疑問を抱きつづけていたところでもある)

 彼らは、尾虫類のワカレオタマボヤ( Oikopleura dioica )のゲノム塩基配列解読の研究にてその違いを過去に示したが、この議論に決着をつけるために研究を一歩進め、問題の被嚢動物、頭索動物、脊椎動物の 3 つの分類群に加えて、棘皮動物(ヒトデなど)も含めた 14 種で、146 個の同じ遺伝子を調べ、この 146 の核内遺伝子からなる系統発生データセット(整列処理した 33,800 のアミノ酸)を組み立てた。
 尚、被嚢動物には進化の遅い種と速い種があり、分類を誤る可能性もあるため、他に進化の遅い 24 種も含めたという。

 この規模を拡大した研究から、なんと脊椎動物が被嚢動物と 1 つの分類群に収まることが実証された。しかも、ナメクジウオ(頭索動物)は脊椎動物よりも棘皮動物に近いという結果が出た。
参考文献:
nature Vol 439 | Issue no.7079 | 891-1030 | 23 February 2006 / Letter p.965 / Tunicates and not cephalochordates are the closest living relatives of vertebrates / モントリオール大学(カナダ) F Delsuc et al.


 上記の論文は、頭索動物ではなく被嚢動物が脊椎動物に最も近縁な現生分類群であることを示したものである。

 本論分では、このデータセットの系統発生分析からは、頭索動物ではなく被嚢動物が脊椎動物に最も近縁な現生分類群であることを示す強力な証拠が得られることを明らかにしている。

 しかし、脊索動物が単系統かどうかはまだ確定できない状態である。が、頭索動物は、統計的に有意の裏づけは得られないものの、意外なことに棘皮動物と同じ分類群に入るからによるもので、この問題については更なるデータで検証する必要があると同研究者は付け加えている。

 この新しい系統発生スキームは、形態学と古生物学の両データの再評価を促すものであり、被嚢動物と頭索動物をモデル動物にした発生・ゲノム研究の解釈に重要な意味合いを持つと述べている。

 つまり、これらの遺伝学上の知見を繋ぎ合わせて脊椎動物のパズルを埋めるには、今後は化石の方を見直す必要があると同時に、発生・ゲノム研究の解釈においては重要なポイントとなるというわけである。


 これだけの懐疑的な見解から研究できる研究者からの報告を見るのは気持ちがいいものである。私的には、尊敬に値するものだと私は思う。きっと、これまで見出すことができなかった真実を見出すことができるであろう。

 これによって真実を見出すことができる分野も多くあることだと思われる。
posted by seed at 07:55| Comment(0) | TrackBack(0) | discovery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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