2010年12月07日

医学:心疾患のリスク因子を同定

染色体 9p21 上の DNA 領域の 1 つに生じた遺伝的変異は冠動脈疾患の発生率と関連があることが、数年前から知られていましたが、その関連がどのようなものかはまだわかっていません。

それは、問題となる 58 キロベースのゲノム領域に既知のタンパク質をコードする遺伝子が存在せず、冠動脈疾患の関与が知られている主な因子との関連性は一見ないように見えるからです。

今回、この DNA 領域を欠くマウスを用いた実験により、染色体上のこの領域が、約 10 万個の塩基対を隔てたところにある 2 つの遺伝子の心臓での発現を調節していることが明らかになりました。

Cdkn2a と Cdkn2b というこれら 2 つの遺伝子は、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子をコードしており、モデルマウスでこえらの遺伝子の発現を抑制すると、大動脈平滑筋細胞の過剰な増殖が認められました。

この結果は、染色体 9p21 の異変と関連がある心臓疾患感受性の根底に、血管細胞増殖の調節異常があることを示唆しています。


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nature 464,317-456 18 March 2010 Issue no.7287
Letter p.409 / Targeted deletion of the 9p21 non-coding coronary artery disease risk interval in mice / A Visel et al.(ローレンスバークレー国立研究所およびエネルギー省合同ゲノム研究所:米)

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2010年09月21日

宇宙:初期宇宙のクエーサーをとらえる

赤方偏移 z≈6 という、宇宙が 10 億年よりも若く、現在の年齢のわずか 7 %だった時代に位置するクエーサーは、 40 個以上発見されています。

意外なことに、これら遠方のクエーサーの性質は、もっと赤方偏移が小さいものとほとんど区別が付かないようにみえるので、進化した天体であると考えられてきました。

今回、 z≈6 にある、高温の塵からの放射を伴わないクエーサーの 2 個目が発見され、また他のクエーサーから、高温ダストは中心のブラックホールの成長に連動して蓄積することを示す証拠が得られたので、これらの極めて遠方にあるクエーサーは、実際に赤方偏移が小さいものよりも進化していないことが確認されました。

塵を伴わないこれら 2 個のクエーサーは塵のない環境で生まれ、非常に若いために観測可能な量の塵をその周囲に生成しなかった、第一世代のクエーサーなのかもしれません。


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nature 464,317-456 18 March 2010 Issue no.7287
Letter p.380 / Dust-free quasars in the early Universe / L Jiang et al.(University of Arizona)
News and Views p.359 / Astrophysis : First generation of Quasars / Giulia Stratta


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2010年09月14日

細胞:老化が腫瘍を阻止する

最近の研究で、細胞老化、つまり細胞周期の負荷逆的な停止が、 in vitro での腫瘍増殖を停止させることが示唆されています。

今回 H-K Lin たちは、老化を引き起こす、これまで知られていなかった経路で、既知の老化メディエーターのほとんどが関与していないものを明らかにしました。

シグナルは、転写因子 Atf6 、およびサイクリン依存性キナーゼ阻害因子である p27 と p21 を介して伝えられます。

この経路は、発がん性シグナル伝達が起こっている場合に、がん原遺伝子 Skp2 の不活性化によって明らかになります。

薬理学的に Skp2 複合体を標的とすると、細胞老化が誘導されて腫瘍形成が制御されるので、そのような薬剤は抗がん剤として有効かもしれません。


### database ###
nature 464,317-456 18 March 2010 Issue no.7287
Article p.374 / Skp2 targeting suppresses tumorigenesis by Arf-p53-independent cellular senescence / H-K Lin et al. (テキサス大学 MD アンダーソンがんセンターおよびスローン・ケタリング記念がんセンター)
News and Views p.363 / Cancer : A lower ber for senescence / Manuel Serrano

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2010年08月12日

医学:細菌をもって細菌を制す

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は健康な人の鼻腔にしばしば存在し、病原性感染がこの無害な初期定着菌群に由来することも多い。

また、常在細菌である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)も鼻腔内に定着します。

今回、一部の表皮ブドウ球菌が分泌するセリンプロテアーゼ Esp が、黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成を阻害し、またその鼻腔内定着を減少させることが示されました。

このことは、多剤耐性菌株による感染も含めた、黄色ブドウ球菌感染の予防や治療に対する新しい方策を示唆しています。


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nature 465,261-390 20 May 2010 Issue no.7296
Letter p.346 / Staphylococcus epidermidis Esp inhibits Staphylococcus aureus biofilm formation and nasal colonization / T Iwase et al.(東京慈恵医科大学)

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2010年06月20日

口蹄疫

宮崎県民の皆様。早く制圧できると良いですね。

口蹄疫』。

徹底とした消毒が必要であることはもちろん、家畜に陽性が出れば一帯の殺処分が必要となります。

宮崎市内の報道によれば、何もしないままでのウイルスの潜伏期間は 6 ヶ月であるといいます。


宮崎市内の報道では妥当な報道がなされてはいます。

県知事の妥当な対応がなされていることも報道されています。

しかし、報道側が選定する有識者のポストは、県内の某大学の某教授ではなく、日頃から研究に携わっているウイルス学者か疫学者にすべきだったと考えます。

なぜなら、口蹄疫ウイルスに詳しくないからです。

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2010年06月12日

医学:地球温暖化とマラリア

熱帯マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に関して最近発表された、科学的根拠に基づく分布地図を、主要なマラリア制圧策が導入される前の 1900 年ごろから後のデータと比較した研究で、気温上昇がマラリア制圧への脅威になるという懸念は誤っていることが示唆されました。

地球全体の気温上昇が明らかであった 100 年間にも、マラリアの分布域と発生頻度は急激に減少していました。

予想される温暖化の影響は、制圧活動の効果より少なくとも 1 桁は規模が小さいことから、マラリア制圧計画の成否は、気候以外の要因によって決まる可能性が高いと考えられています。


### database ###
nature 465,261-390 20 May 2010 Issue no.7296
Letter p.342 / Climate change and the global malaria recession / P W Gething et al. (University of Oxford)
News p.280 / Malaria may not rise as world warms / Heidi Ledford
www.nature.com/podcast


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posted by 藤次郎 at 15:26| Comment(1) | TrackBack(0) | frontiers | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月10日

気候:海洋は温暖化している

海洋表層は巨大な熱シンクとして働き、人為起源の温室効果ガスにより生み出された余分なエネルギーの大部分を吸収してきました。

このため、海洋の貯熱量は気候変化の主要な指標となる可能性があります。

しかし、地球規模でのエネルギー収支を見積もり、気候モデルを絞り込むのに役立つようにするには、そのような主要な指標の測定の不確実性を十分に解明する必要があります。

今のところ、海洋の熱吸収量の規模は極めて不明確であり、特に年々変動パターンは見積もりによって異なっています。

注目すべき国際共同研究において Lyman たちは、入手不可能な海洋表層貯熱量偏差の変動曲線を比較し、投下式水温水深計データのバイアス補正が難しいことを含めて、この変動曲線に付随する不確実性の原因を分析しました。

そして、不確実性があるにもかかわらず、1993 〜 2008 年の間に 1 平方メートルあたり 0.64 ワットの温暖化傾向を示す、明瞭かつ確固とした証拠が見出されました。


### database ###
nature 465,261-390 20 May 2010 Issue no.7296
Letter p.334 / Robust warming of the global upper ocean / J M Lyman et al. (University of Hawaii at Manoa, NOAA/Pacific Marine Environmental Laboratory)
News and Vews p.304 / Global Change : The ocean is warming, isn't it ? / Kevin E. Trenberth


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2010年06月04日

気候:モンスーンに対する太陽の影響

太陽放射、すなわち日射の変化のような気候への外部からの影響は、地域によって異なる応答を引き起こします。

高緯度域から低緯度域にわたっては豊富な記録が存在し、日射と気候変動の関係を見ることができます。

しかし、熱帯域の記録はずっと少なく、モンスーン特有の雨季と乾季が交互に起こる気候を生む熱帯収束帯が通過する地域の記録は、なおのこと少ないものとなっています。

Verschuren たちは、キリマンジャロ山の斜面に存在する火口湖、チャラ湖の 2 万 5,000 年にわたる堆積層序にそのような記録を発見し、水文変動の代理指標を分析しました。

そして、東アフリカのモンスーンに伴う降水は、約 1 万 1,500 年周期で変動していることが明らかになり、この周期は、軌道運動によって制御される太陽放射強制と同期していたことがわかりました。


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nature 462,535-688 3 December 2009 Issue no.7273
Letter p.637 / Half-precessional dynamics of monsoon rainfall near the East African Equator / D Verschuren et al. (Ghent University)
Abstractions p.543 / Drik Verschuren

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2010年05月28日

医学: Foxa2 が肥満を防止する可能性

インスリンが、飢餓および摂食に応答して、代謝と行動を調節する新規な機構が発見されました。

神経ペプチドであるオレキシンや MCH (メラニン凝集ホルモン)は、絶食時に脳の古典的な「摂食中枢」である視床下部外側野で放出され、動機付けられた行動を誘発し、食物摂取を促進します。

今回マウスを使った研究で、オレキシンや MCH の発現は、転写因子 Foxa2 による調節を受けていることが示されました。

摂食後には、インスリンシグナル伝達が Foxa2 の影響を無効にし、オレキシンや MCH の産生が止まります。

Foxa2 が恒常的に「オン(活性型)」になっているマウスは、オレキシンや MCH の量が多く、摂食量も増え、身体の動きも活発で、インスリン感受性も改善されていました。

肥満マウスで Foxa2 を「オン」にすると、除脂肪体重が増加し、脂肪量が減少します。

したがって、 Foxa2 のリン酸化の薬理学的阻害は、身体活動のレベル上昇につながり、健康全般が改善される可能性が出てきました。


### database ###
nature 462,535-688 3 December 2009 Issue no.7273
Letter p.646 / Regulation of adaptive behaviour during fasting by hypothalamic Foxa2 / J P Silva et al. (The Rockfeller University)


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2010年04月20日

免疫:新しいヘルプの方法

細胞内病原体に対する防御が成功するには、中和抗体と細胞傷害性 CD8^+ T リンパ球(CTL)応答が必要であり、これらは両方ともヘルパー CD4^+ T 細胞の活性に大きく依存しています。

Nakanishi たちは、CTL 応答における今まで知られていなかった CD4 ヘルプについて報告しています。

CD4^+ T 細胞は、ウイルス感染した粘膜部位への CD8^+ T 細胞の動員に必要であることがわかりました。

CD4^+ T 細胞がもたらすこのヘルプは、インターフェロン -γの産生と局所的なケモカインの分泌誘導が欠かせません。


### database ###
nature 462,381-534 26 November 2009 Issue no.7272
Letter p.510 / CD8^+ T lymphocyte mobilization to virus-infected tissue requires CD4^+ T -cell help / Y Nakanishi et al. (Yale University School of Medicine)
news and views p.418 / Immunology : A helpers' guide to infection / Thomas Gebhardt and Francis R. Carbone


posted by 藤次郎 at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | discovery | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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